umenikki

小さな旅の日々

『スカーレット・ピンパーネル』(2016.10.22 赤坂ACTシアター)

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「知恵で奴らを出し抜くのだ!」
恐怖政治の嵐吹き荒れるパリの街、
権力に挑む情熱と勇気!

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私は宝塚歌劇のファンなのですが、宝塚以外のミュージカルを観るのは久しぶりで、とても楽しめました。

 

この『スカーレット・ピンパーネル』は宝塚で過去2回上演しており、その最初の2008年が日本初演。今回ヒロインのマルグリット役の安蘭けいさんが当時トップスターで、主人公のパーシー・ブレイクニーを演じられていました。

そちらは生では観ていないのですが、後から映像で見たら音楽等々が素晴らしくて驚いて、どうしても生で観たいと思い続けての今回の観劇でした。

 

ストーリーを一言で言えば、勧善懲悪とまでは行きませんが、ユーモアある大人の男性が活躍する痛快なヒーローもの、となるのでしょうか。ですが、それだけではありません。私がこの作品の肝だと思うのは、主人公とヒロインが二人とも十分に大人で、愛し合っているのに、ある抜き差しならないことでお互いを疑い、苦悩し続けながらも、それぞれに自分にできることを考え、動く物語、という点です。

 

マルグリットは元スター女優の、愛情深く心の強い女性です。イギリス貴族のパーシーはそんな彼女に革命下のパリで出会い、二人は恋に落ち、出会ってわずか6週間で結婚に至ります。

この出会いの過程は舞台上では描かれず、「私たち結婚します!」というところからストーリーが始まるのですが、この6週間という知り合ってからの期間の短さが、二人を苦しめます。

たった6週間で、自分は相手の何を分かっていると言えるのだろうか、と。

 

観客の私たちはそれが誤解であるということを分かっているのでやきもきするのですが、パーシーもマルグリットも深刻に悩み、考え続けます。彼らはけしてただ自分の運命を嘆くことはしません。自分でした決断の結果として、愛している相手を疑わなくてはいけないことに苦悩するのです。そして、愛に苦しみながらも、事件が起きると、その時、その時で、自分ができることを考えて自ら行動する。

人は24時間恋や愛のことを考えているわけではありませんよね。思いをかける大切な相手がいればそれは心の大きな部分を占めますが、生きるということは次から次に起きる色々なことに対処することでもあります。『スカーレット・ピンパーネル』は、フランス革命の嵐の中というスケールの大きな時代設定ですが、パーシーも、マルグリットも、自分で精一杯考えて、決めて、動く。そんな、確かな人格のあるキャラクターです。

 

主演の二人、石丸幹二さんと安蘭さんが、歌唱やたたずまいの美しさはもちろん、大きな心と魅力豊かな、とてもリアルな人物造形をされていて、共感をせずにいられない素敵なパーシーとマルグリットでした。また、ヒロインに一方的な思いを寄せる敵役のショーブランも非常に重要な役なのですが、石井一孝さんは、凄味がありながらも色気とおかしみが滲み、とてもよく演じていらっしゃいました。

  

新演出ということでしたが、舞台装置や転換などとてもおしゃれで気が利いていると感心しました。また、男性の声が入った音楽の厚み、楽曲の美しさにも聞き惚れました。上質なものを観た満足感でいっぱいです。楽しかった。

 

※赤坂では日程終了しましたが、大阪を回りながらまた東京に戻り、11/29まで上演しています。